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アホ支群本部
千葉県東葛郡市川町に大正年間に創業した「市川広小路 平和堂」。 創業以来、市川の地で国府台連隊をはじめ、軍部隊納めの商いを行うも市川空襲で焼夷弾の直撃を受け被災、廃業。 平成20年。半世紀余りの眠りから覚醒し、国防産業の「隙間のスキマ」を狙う「国防商会」として再始動。 部隊購入、隊員個人によるセミオーダー、PXメーカーに対する助言等、「かゆいところに手が届く」各種個人装備、被服、旧装備の復刻等を行っています。 詳細は「オーナーへメッセージ」よりご連絡下さい。
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Posted by ミリタリーブログ at

2012年12月20日

ニューナンブけん銃入れについて

「日本警察」のシンボルともいうべき戦後国産けん銃第一号のニューナンブM60。

少し前まで「制服」の外勤警察官といえばほぼニューナンブであったが、その後に導入されたM37エアウェイト、M360Jサクラ等に更新されて、外勤警察官の腰からぶら下がる姿を見ることも少なくなってきたが、現行の「新制服」への切り替え前はエアウェイトも装備されてはいなかったことから、昭和後期ではニューナンブが数の上では主力けん銃として使用され、チーフス、ミリポリなどと共に使用されていた。

「新制服」切替とともにニューナンブ用けん銃入れもいっせいに新型に更新されたが、旧型は南部十四年式、二十六年式用拳銃嚢などの旧軍拳銃嚢などと共通する、型押しで絞り出されたけん銃のグリップのすべてが隠れる「クラムシェル型」のフルフラップを持っており、「ニューナンブ」と聞いて、真っ先にこのホルスターを連想する「昭和生まれ」も多いかと思う。

しかし、このニューナンブ用の蓋付きけん銃入れも調べ出すときりがなく、便宜上名称をつければ、

・「県警型」 蓋の上端が直線的な意匠
・「警視庁型」 蓋の上端が銃把(グリップ)に沿って斜めの意匠




※ 左 「県警型 一般用」 右 「警視庁型 乗車用」

以上の特徴を持つ「県警型」と、「警視庁型」に分けられ、「警視庁型」は、けん銃のグリップに合わせて蓋自体が斜めに切られ、全体的にけん銃入れを小型、軽量化されている。また「県警型」でも、

「昔から大まかな規格は決まっていても、各県警で微妙に仕様が異なっていて、試作したものを県警が警察庁にお伺いを立てて承認されたものが納入されていた」(元・装備品製造メーカー)

といい、けん銃ケース自体の縫製もミシンか、手縫いかといった違いがあり、特徴的な蓋も丸みを帯びたものから、鋭角な形状のもの。蓋自体が一回り大きいミリポリ用などに近い大きさを持つものなど、細かな仕様や製作したメーカーによる違いが顕著で興味深い。今回は復刻版製作の参考に各方面よりお借りした実物を基に比較。



上記の写真は神奈川県警?の払い下げ品とされる、いわゆる「県警型」のもので、「ニューナンブ用けん銃入れ」として、このタイプを連想する人も多いかと思う。この県警型にも大きく分けて、帯革固定部分がホルスターの袋部分に直接縫い込まれた「一般用」と、自動車警ら隊など、車両に乗降する際に邪魔にならないようにけん銃入れの角度を調整できる「乗車用」が存在する。





※ 上掲の二点とも 左 「県警型乗車用」 右 「県警型一般用」 



※ 大阪府警?払下げとされる「県警型」は他のものよりも大きめの蓋が付けられ、横方向で2cm程度大きい。



※左 「県警型 一般用 (大阪?)」 右 「県警型 一般用 (神奈川?)」 

これらのうち、乗車用はとくに手間がかかっており、角度調整用のロック機能のつけられた金具を帯革取り付け部分と、けん銃入れ本体の間に縫い込んであり、負荷のかかる部分のため、相当強靭な皮革を使っていて、縫い糸も番手の最も太い糸で、職人がひとつひとつ縫い上げている。「外勤警察官用の実用品」として作られてはいるが、「実用品として頑丈であることと同時に、警察官としての威厳を持たせることを要求されていたため、造りもおのずと手間暇のかかる方法となった」(元・装備品製造メーカー)という。蓋の造型、けん銃入れ本体の微妙な曲線など、各所にまさに職人技と呼べる手間暇がかけられ、相当なコストもかけられている。

これらの「蓋付きけん銃ケース」は警察官の服制について規定した公安委員会規則の一部が改正された昭和48年(1973年)6月以降に、改正以前から使われていた「ニューナンブけん銃ケース 蓋なし」に代わって製造されたもので、平成6年(1994年)の現行の服装規則へ変更されるまでの20年余り製造されており、「乗車用」が蓋つきけん銃入れの製造開始当初から存在したのか、途中から導入されたのか、はたまた「一般型」と「乗車型」が平成6年まで並行して使用されたのかなどの詳細は不明だ。

「警視庁は予算規模も大きく「首都を守る」という誇りもあったのか、現場警察官からの装備改善の要望を積極的に聞いており、装備品の改良に熱心だった。旧制服の時代にはほかの県警と異なる警棒吊りやけん銃入れを使っていたし、警察庁の規定とはまったく異なる規格を制定。のちに警察庁が警視庁の型を制式化するなどということもあって、他県警と比べて予算も多く持っていたことも大きいが、装備品はいまも昔も独自のものが多かった」(元・払下げ業者)

その「最たるもの」が、「ニューナンブけん銃入れ (警視庁型)」であったという。



前出の様に「警視庁型」は県警型と異なり、蓋の上部が銃把(グリップ)に合わせて斜めにカットされており、「腰の大砲」を携行する上で、無駄なスペースがなくなった分、小型化されて携行しやすいように改良されている。





※ 左 「県警型」 右 「警視庁型」

県警型と比較してみると、全体的な造りが一般的な県警型よりもタイトになっていて、けん銃ケースの袋部分の全長も短くなり、少しでも小型、軽量化しようとした様子が伺える。けん銃ケース自体も二十六年式拳銃嚢とよく似ており、「警視庁型」の導入されたころには旧日本軍の装備品を製作。戦後は警察向けの装備品を多く納入していたメーカーも健在な頃で、「警視庁型」導入の背景にはこのような事情も関係していたのかもしれない。

しかし、この警視庁型の蓋ひとつとっても、「威厳を持たせる」一環か、非常に手の込んだ成形方法で繊細に型絞りされている。この型を使った「絞り」と呼ばれる成形技術は皮革製造メーカーの腕が如実に出る部分で、蓋自体が湾曲しているため、プレスによる打ち抜きが出来ないため、おのずと職人による手作業での切り出しとなり、コスト的にも、技術的にも高くつく。「現代的なコスト感覚ではなかなか作れないシロモノ。作ることが出来る業者も限られてくる」(皮革業者)という。

そして、改めて見てみると、けん銃入れの蓋の上端ギリギリに銃把(グリップ)が当たるように作られていて、けん銃自体をけん銃入れ本体にとめる「安全止革」の寸法も長年の使用で伸びないようにかなりタイトに作られ、この「ダブルロック」から使い込んだけん銃入れでも、ホルスターのなかでけん銃が暴れてまかり間違っても脱落しないように1mm単位の誤差も出ないようにタイトに作られている。「ニューナンブ 警視庁型」ひとつとっても、当時の物作りが、非常に手の込んだ「実用品離れ」した工芸品的な手順で製作されていたことがうかがえ興味深い。


しかし、かつては警備用品として払い下げ品店で売られた外勤警察官の装備品も、民間での需要のない(←あっても困る)「けん銃入れ」とあって、その多くは払い下げられても、

「警察のホルスターはいい革を使っているので火のつきがいい」(元・払下げ業者)

と、これらの「工芸品」も、風呂屋の薪がわりに下町の風呂屋にトラック満載で運び込まれて、年中、燃やされ、またあるものは埋め立て地の造成で東京湾の処理場に埋められたという。

「払い下げられたホルスターのうち、状態のいい物などのごく一部が映画制作会社や映画小道具のレンタル会社に売られ、撮影用に使われた」(元・払下げ業者)

ここに集まったけん銃入れもこのようにして「生き残った」ものの一部と言えそうだ。

そして、そうやって映画制作会社などに渡ったけん銃入れも長年の使用で損耗し、手間暇のかかる製法上、なかなか複製が作れず、映画関係者も代用品に頭を抱えていると伝え聞く。趣味世界でもいくつもの「ニューナンブ用ホルスターのレプリカ」は作られたが、どれも工程や材質を簡略化した現行初期型を模したもので、旧型けん銃入れが作られなかった背景には「複製を作ろうにもコスト的にも厳しく、作れる職人自体が鬼籍入り」(映像制作会社関係者)このような理由もあったという。

「けん銃入れ」ひとつとっても、その背景には時代が見えてなかなか面白い。しかし、日本刀の時代から、三八式小銃の槓桿(ボルト)後部の彫刻など、「武器としては不要な装飾」に心血を注いだ旧日本軍。そして、戦後の「民主警察」に至るまで「武器という実用品に美を求める」日本人の気風は変わっていないのだなと、感じさせられる「ニューナンブけん銃入れ」調査であった。

  

Posted by アホ支群本部 at 21:37Comments(2)調査研究

2012年12月20日

コルト45口径自動式けん銃入れについて

懸案の「ガバメント用けん銃ケース」複製計画の進捗について。いくつか質問メールもいただいていますので、同時に回答します。



※ 昭和50年代の愛知県警警察官の画像。「蓋なし」のガバメントは紺色のけん銃つりひも(回転式用)で下げており、つり金具とランヤードリングの間には金具を介して取り付けられていたことがわかる。


まず進捗状況について。現在までに皮革製造メーカー、自衛隊用品製造メーカー等5社に製作打診をするも、

「革が特殊な規格で現在では調達不可能」
「革厚4㎜を4枚重ねではミシン縫いが出来ず総手縫い。労力的、工場の能力的に不可能」
「作ったとしても一個5万超えは確実」


と、交渉は不調続きでありましたが、過去に警察けん銃入れの制作を行っていた職人の方を発見、連絡を取ったところ、工場には当時の型等は残っていませんでしたが、実物より採寸し、やはり過去警察向けの装備品の刃型を作っていた業者に型製作をお願いし、製造が可能と回答がありました。またけん銃入れ本体に使う特殊規格の革、部材については現在でも特殊用途向けにごく少量が国産で製造されていることが判明、発注しました。

また新年の1月中に見積もりをとり、試作品を製造。その後に細部打ち合わせを経て、来春に本格製造に着手予定。1ロットが約30個前後となりますので、現時点の予約数12個を除いた20個程度を販売予定です。

「平和堂」自体が、企業ではなく、皆、ほかに本業を持ち、貯金のなかからの自腹持ち出しで企画・製造しますので、予算的にも第2ロット以降の製造は完全未定。予約数に達し次第、再生産というかたちとなりますが、

「コルト45口径自動式のけん銃入れ」

という、あまりにニッチな品かつ、「実物工場で、実物部材を使用し製作した複製品」と、「形だけのレプリカ」ではなく、可能な限り、当時の材料、部材を使用した「復刻」を目指し、品質面での妥協は一切しませんので、価格的にも決して安い物とはならないことから、到底、数が出るとも思えず、1ロット限りの製造となる可能性が濃厚です。

全体での発注数を把握、生産量を確定したいと思いますので、購入希望(予約ではない)の方がいらっしゃいましたら「オーナーよりメッセージ」等でご連絡いただければと思います。

また打ち合わせの席上、工場側より「他のけん銃入れも製造可能」と回答がありましたので、第一弾として「コルト45口径自動式のけん銃入れ(蓋なし)」を製造販売し、資金が回収できれば(自転車操業として)第二弾、第三弾としてニューナンブ、M1917等のけん銃入れをはじめとした往年の「昭和警察装備」を復刻してゆこうと考えています。



※ 群馬県警察史より。

以下、「コルト45口径自動式のけん銃入れ」についての調査研究の経過報告。

「Gun Magazine 2012年11月号」(ユニバーサル出版)誌上にて連載中の「SMALL ARMS ACCESSORIES」第三回では「日本警察拳銃アクセサリー(1949~1954)」として、敗戦から高度経済成長突入前夜の日本警察の装備品の変遷を貴重な実物コレクションの高解像度のカラー写真とともに掲載されており、非常に貴重な資料となっており必見。



このなかでも見開き2ページでガバメント用のけん銃入れが解説されており、興味深い記述がある。

「紹介しているホルスターは一般的な形であるが、ほかにアメリカ軍から供与のM1916と同型の国産ホルスターも存在しており、昭和30年代以降に採用された物を含め、複数のバリエーションがあるといわれている」

とあり、当時の事情を知る方に話を聞くと、

「戦後に米軍の拳銃が警察に供与されることとなって、ホルスターや弾入れも同時に供与されていたようで、ガバメントはじめ、自動式のけん銃入れの払い下げは少数だったが、これらのなかに米軍の使っていたボロボロのこれ(M1916を指さす)が混じっていた。昭和の終わり頃の払い下げ品のなかに見た覚えがある」(元払下げ業者)

「ガバメントのけん銃入れは帯革に直接「ベルト通し」に無理やり取り付けているところもあれば、弾帯から吊るす金具の部分に鳩目をあけたアダプターで「騎兵用」のように帯革からぶら下げているところもあった」(研究家)




※ 「日本警察拳銃アクセサリー(1949~1954)」の記事中に掲載された騒擾事件に出動した大阪府警警察官の写真。「蓋なし」けん銃ケースでガバメントを携行し、予備たま入れは蓋が斜めのものを使っていたことがわかる。昭和27年6月。

「日本警察拳銃アクセサリー(1949~1954)」の記述を裏付ける証言が出てきた。しかし、「M1916と同型の国産ホルスター」を所有している人に会ったことはなく、現物の写真等も確認できないため、謎は深まるが、「M1916および同型の国産ホルスターは蓋の部分を止める際にボタンではなく、革にあけた切れ目をギボシで留める形だったため、穴が広がって「バカ」になりやすく、後年の修理等でボタンまたは、自衛隊の弾納等に使われている「亀の子ホック」に改造されていたようだ」という証言もあり、「M1916型」にも外見上のバリエーションが存在したことが伺え興味深い。が、やはり証言を裏付ける資料、写真等が確認できていないが、情報を総合すると、確認された制服警察官用のコルト45口径自動式けん銃入れには以下の種類が存在したようだ。

・蓋なし (昭和20年代初頭~平成6年頃?)
・蓋あり 自衛隊型 (昭和30年代?~不明)
・M1916および同型品 (昭和20年代初頭~昭和後期?)


ということで、「日本警察拳銃アクセサリー(1949~1954)」の資料として貸し出された実物を採寸用に借り受けたので、実物をもとに解説。

「蓋なし」

全国的に使用されたガバメント用けん銃入れの「定番」とみられるもの。昭和20年代の滋賀県警「MP同乗警察官」、昭和50年代の愛知県警の新人警察官、平成6年の埼玉県警機動隊での使用が確認されている。しかし、次回記事で言及予定のニューナンブ用ともども「大まかな規格は決まっていても、県警ごとに細部仕様は異なった」といい、本部単位で細部仕様は異なっていた可能性がある。



※ 「蓋なし」けん銃入れと、予備たま入れ。予備たま入れはガバメント用弾倉2本を収納する。所有者の手元にやってきた経過を聞き取り、出所を調査したところ、「愛知県に本社があるメーカーの本社倉庫で発見(発掘)されたものを店頭に出したところ、所有者が大興奮で購入していった。うちでは官庁の払い下げを受けたことはなく、昔の社員の私物ではないか」とのことで、愛知県警から払い下げられたものを社員の誰かが購入し、倉庫で忘れ去られたものと考えられる。



※ 刻印部分。「COLT 45-5」の刻印あり。製造所刻印等はない。



※ けん銃入れ本体は払い下げ品でも多く出回った「S&W 45口径 回転式用 (S&W 45 JPNA 1208)」と全体の造作は似ているが、ガバメントの太い銃身を包むため、「袋」部分が太くなっており、重厚な雰囲気を持つ。また現行のけん銃入れと使用する部材等は共通だが、革の厚みは現在よりもかなり厚く、表面処理も異なる。



※ 「予備たま入れ」。非常に手の込んだ製作方法で作られており、革厚も4種類を使い分けている。この形状のものは昭和20年代の米軍けん銃の供与開始直後に導入されたが、他にも通常の45口径回転式の予備たま入れを縦方向に伸ばしたような「ガバメント用予備たま入れ」が存在したとも聞くが詳細は不明。後述する「45口径 けん銃入れ 蓋あり」は自衛隊の「11.4㎜警務隊用」から角度調整金具を省略した同型であり、予備たま入れも自衛隊で使用された「M1916用または米軍型」が存在した可能性が高い。

「蓋付き」



M1916型のフラップを小型化したような自衛隊の「11.4㎜けん銃(ガバメント)」の警務隊用ホルスターの袋形状は同じで、角度調整部を省略したものと考えられる。「蓋なし」と比較すると、革自体の厚みが若干薄くなっており、裏側にも一切の刻印は入っていない。「自衛隊用を警察用に採用した」のか「警察用を自衛隊用に採用」したのかは不明。修復によるものかは不明だが、同型で蓋の固定がスナップボタン、「亀の子ホック」のものも存在するらしい。余談だが自衛隊の「11.4㎜けん銃(ガバメント)のホルスター」も複数の説があり、謎が多い。



※ 米軍用のM1916ホルスター。供与当時は米軍で黒色のもの(1956年(昭和31年)頃よりモデルチェンジ)は採用されておらず、茶色の物を警察では黒く染めて使用していたという。


日本昭和警察の「ガバメント用けん銃入れ」も複数種類が存在していたようだが真相は闇のなか。

「自分が使っていたものはこうなっていた」
「先輩のガバはこのようにぶら下げていた」
「昔の報道写真のなかにこんなものが映っていた」


等、詳細をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひともご教授いただければと思います。

現物が確認され、要望があり次第、次回、復刻の候補に入れてゆこうと考えています。
  

Posted by アホ支群本部 at 16:47Comments(0)調査研究