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アホ支群本部
千葉県東葛郡市川町に大正年間に創業した「市川広小路 平和堂」。 創業以来、市川の地で国府台連隊をはじめ、軍部隊納めの商いを行うも市川空襲で焼夷弾の直撃を受け被災、廃業。 平成20年。半世紀余りの眠りから覚醒し、国防産業の「隙間のスキマ」を狙う「国防商会」として再始動。 部隊購入、隊員個人によるセミオーダー、PXメーカーに対する助言等、「かゆいところに手が届く」各種個人装備、被服、旧装備の復刻等を行っています。 詳細は「オーナーへメッセージ」よりご連絡下さい。
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2012年12月20日

コルト45口径自動式けん銃入れについて

懸案の「ガバメント用けん銃ケース」複製計画の進捗について。いくつか質問メールもいただいていますので、同時に回答します。

コルト45口径自動式けん銃入れについて

※ 昭和50年代の愛知県警警察官の画像。「蓋なし」のガバメントは紺色のけん銃つりひも(回転式用)で下げており、つり金具とランヤードリングの間には金具を介して取り付けられていたことがわかる。


まず進捗状況について。現在までに皮革製造メーカー、自衛隊用品製造メーカー等5社に製作打診をするも、

「革が特殊な規格で現在では調達不可能」
「革厚4㎜を4枚重ねではミシン縫いが出来ず総手縫い。労力的、工場の能力的に不可能」
「作ったとしても一個5万超えは確実」


と、交渉は不調続きでありましたが、過去に警察けん銃入れの制作を行っていた職人の方を発見、連絡を取ったところ、工場には当時の型等は残っていませんでしたが、実物より採寸し、やはり過去警察向けの装備品の刃型を作っていた業者に型製作をお願いし、製造が可能と回答がありました。またけん銃入れ本体に使う特殊規格の革、部材については現在でも特殊用途向けにごく少量が国産で製造されていることが判明、発注しました。

また新年の1月中に見積もりをとり、試作品を製造。その後に細部打ち合わせを経て、来春に本格製造に着手予定。1ロットが約30個前後となりますので、現時点の予約数12個を除いた20個程度を販売予定です。

「平和堂」自体が、企業ではなく、皆、ほかに本業を持ち、貯金のなかからの自腹持ち出しで企画・製造しますので、予算的にも第2ロット以降の製造は完全未定。予約数に達し次第、再生産というかたちとなりますが、

「コルト45口径自動式のけん銃入れ」

という、あまりにニッチな品かつ、「実物工場で、実物部材を使用し製作した複製品」と、「形だけのレプリカ」ではなく、可能な限り、当時の材料、部材を使用した「復刻」を目指し、品質面での妥協は一切しませんので、価格的にも決して安い物とはならないことから、到底、数が出るとも思えず、1ロット限りの製造となる可能性が濃厚です。

全体での発注数を把握、生産量を確定したいと思いますので、購入希望(予約ではない)の方がいらっしゃいましたら「オーナーよりメッセージ」等でご連絡いただければと思います。

また打ち合わせの席上、工場側より「他のけん銃入れも製造可能」と回答がありましたので、第一弾として「コルト45口径自動式のけん銃入れ(蓋なし)」を製造販売し、資金が回収できれば(自転車操業として)第二弾、第三弾としてニューナンブ、M1917等のけん銃入れをはじめとした往年の「昭和警察装備」を復刻してゆこうと考えています。

コルト45口径自動式けん銃入れについて

※ 群馬県警察史より。

以下、「コルト45口径自動式のけん銃入れ」についての調査研究の経過報告。

「Gun Magazine 2012年11月号」(ユニバーサル出版)誌上にて連載中の「SMALL ARMS ACCESSORIES」第三回では「日本警察拳銃アクセサリー(1949~1954)」として、敗戦から高度経済成長突入前夜の日本警察の装備品の変遷を貴重な実物コレクションの高解像度のカラー写真とともに掲載されており、非常に貴重な資料となっており必見。

コルト45口径自動式けん銃入れについて

このなかでも見開き2ページでガバメント用のけん銃入れが解説されており、興味深い記述がある。

「紹介しているホルスターは一般的な形であるが、ほかにアメリカ軍から供与のM1916と同型の国産ホルスターも存在しており、昭和30年代以降に採用された物を含め、複数のバリエーションがあるといわれている」

とあり、当時の事情を知る方に話を聞くと、

「戦後に米軍の拳銃が警察に供与されることとなって、ホルスターや弾入れも同時に供与されていたようで、ガバメントはじめ、自動式のけん銃入れの払い下げは少数だったが、これらのなかに米軍の使っていたボロボロのこれ(M1916を指さす)が混じっていた。昭和の終わり頃の払い下げ品のなかに見た覚えがある」(元払下げ業者)

「ガバメントのけん銃入れは帯革に直接「ベルト通し」に無理やり取り付けているところもあれば、弾帯から吊るす金具の部分に鳩目をあけたアダプターで「騎兵用」のように帯革からぶら下げているところもあった」(研究家)


コルト45口径自動式けん銃入れについて

※ 「日本警察拳銃アクセサリー(1949~1954)」の記事中に掲載された騒擾事件に出動した大阪府警警察官の写真。「蓋なし」けん銃ケースでガバメントを携行し、予備たま入れは蓋が斜めのものを使っていたことがわかる。昭和27年6月。

「日本警察拳銃アクセサリー(1949~1954)」の記述を裏付ける証言が出てきた。しかし、「M1916と同型の国産ホルスター」を所有している人に会ったことはなく、現物の写真等も確認できないため、謎は深まるが、「M1916および同型の国産ホルスターは蓋の部分を止める際にボタンではなく、革にあけた切れ目をギボシで留める形だったため、穴が広がって「バカ」になりやすく、後年の修理等でボタンまたは、自衛隊の弾納等に使われている「亀の子ホック」に改造されていたようだ」という証言もあり、「M1916型」にも外見上のバリエーションが存在したことが伺え興味深い。が、やはり証言を裏付ける資料、写真等が確認できていないが、情報を総合すると、確認された制服警察官用のコルト45口径自動式けん銃入れには以下の種類が存在したようだ。

・蓋なし (昭和20年代初頭~平成6年頃?)
・蓋あり 自衛隊型 (昭和30年代?~不明)
・M1916および同型品 (昭和20年代初頭~昭和後期?)


ということで、「日本警察拳銃アクセサリー(1949~1954)」の資料として貸し出された実物を採寸用に借り受けたので、実物をもとに解説。

「蓋なし」

全国的に使用されたガバメント用けん銃入れの「定番」とみられるもの。昭和20年代の滋賀県警「MP同乗警察官」、昭和50年代の愛知県警の新人警察官、平成6年の埼玉県警機動隊での使用が確認されている。しかし、次回記事で言及予定のニューナンブ用ともども「大まかな規格は決まっていても、県警ごとに細部仕様は異なった」といい、本部単位で細部仕様は異なっていた可能性がある。

コルト45口径自動式けん銃入れについて

※ 「蓋なし」けん銃入れと、予備たま入れ。予備たま入れはガバメント用弾倉2本を収納する。所有者の手元にやってきた経過を聞き取り、出所を調査したところ、「愛知県に本社があるメーカーの本社倉庫で発見(発掘)されたものを店頭に出したところ、所有者が大興奮で購入していった。うちでは官庁の払い下げを受けたことはなく、昔の社員の私物ではないか」とのことで、愛知県警から払い下げられたものを社員の誰かが購入し、倉庫で忘れ去られたものと考えられる。

コルト45口径自動式けん銃入れについて

※ 刻印部分。「COLT 45-5」の刻印あり。製造所刻印等はない。

コルト45口径自動式けん銃入れについて

※ けん銃入れ本体は払い下げ品でも多く出回った「S&W 45口径 回転式用 (S&W 45 JPNA 1208)」と全体の造作は似ているが、ガバメントの太い銃身を包むため、「袋」部分が太くなっており、重厚な雰囲気を持つ。また現行のけん銃入れと使用する部材等は共通だが、革の厚みは現在よりもかなり厚く、表面処理も異なる。

コルト45口径自動式けん銃入れについて

※ 「予備たま入れ」。非常に手の込んだ製作方法で作られており、革厚も4種類を使い分けている。この形状のものは昭和20年代の米軍けん銃の供与開始直後に導入されたが、他にも通常の45口径回転式の予備たま入れを縦方向に伸ばしたような「ガバメント用予備たま入れ」が存在したとも聞くが詳細は不明。後述する「45口径 けん銃入れ 蓋あり」は自衛隊の「11.4㎜警務隊用」から角度調整金具を省略した同型であり、予備たま入れも自衛隊で使用された「M1916用または米軍型」が存在した可能性が高い。

「蓋付き」

コルト45口径自動式けん銃入れについて

M1916型のフラップを小型化したような自衛隊の「11.4㎜けん銃(ガバメント)」の警務隊用ホルスターの袋形状は同じで、角度調整部を省略したものと考えられる。「蓋なし」と比較すると、革自体の厚みが若干薄くなっており、裏側にも一切の刻印は入っていない。「自衛隊用を警察用に採用した」のか「警察用を自衛隊用に採用」したのかは不明。修復によるものかは不明だが、同型で蓋の固定がスナップボタン、「亀の子ホック」のものも存在するらしい。余談だが自衛隊の「11.4㎜けん銃(ガバメント)のホルスター」も複数の説があり、謎が多い。

コルト45口径自動式けん銃入れについて

※ 米軍用のM1916ホルスター。供与当時は米軍で黒色のもの(1956年(昭和31年)頃よりモデルチェンジ)は採用されておらず、茶色の物を警察では黒く染めて使用していたという。


日本昭和警察の「ガバメント用けん銃入れ」も複数種類が存在していたようだが真相は闇のなか。

「自分が使っていたものはこうなっていた」
「先輩のガバはこのようにぶら下げていた」
「昔の報道写真のなかにこんなものが映っていた」


等、詳細をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひともご教授いただければと思います。

現物が確認され、要望があり次第、次回、復刻の候補に入れてゆこうと考えています。




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Posted by アホ支群本部 at 16:47│Comments(0)調査研究
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